★ メキシコ文化にふれる(サン・ルイス・ポトシ州の州都)
JECK会員 工藤眞也
3、日本人には理解のできない時間の感覚
朝8:00時の出勤時間、午後15:00時退庁時間に決められているが、時間厳守をしているのは日本人職員と数名の職員である。悲しいかな日本の習慣にどっぷりと漬かり切っている我々は定時の5分前からの出勤でなければ気持ちが悪いが、殆どの職員は慌てふためいて時間ぎりぎりに出勤する。
逆に、退社時間は恐ろしいほど時間厳守で、全員慌てる様に帰宅し、セキュリテーのため出入り口に施錠がなされるので注意を要する。実際に仕事熱心な日本人が退社時間を忘れて書類の整理に打ち込んだ結果、事務所内に閉じ込められTELで救出を求めたことがある。
出勤時間には遅れても、退社時間は厳守する・・微笑ましい思いがする。
笑い話だが、“ちょっと待っては”、10分待ちのことであり、“10分待っては”、1時間待ちのことであり、一時間は、半日であり、半日は、何時かは保障がない。
ただし、メキシコ人の名誉のため言っておかなければならないが、定期バス便の出発時間や飛行機の発時間にそれ程の遅れは無い。それにフランス人の時間にたいする感覚が更に大らかであることを考えると、彼らだけを責められない思いもする。
実は右下の写真は、ある地方事務所での打ち合わせであるが約束の時間に5分と遅れなかった。我々日本人の時間に対する習慣をよく理解しており特別気を配ったとの事であった。
地方事務所での打合せ会議 JICAの無償資金援助で設置した分析室。
メキシコ人が約束の時間に遅れるのは長い歴史上の習慣からくるものであり、不誠実とか怠惰から生ずるものではないと理解しなければならないと思う。 8時の待ち合わせに10分や30分前に到着していなければ気のすまない日本人には大変苦痛な習慣であろうが、此処は日本じゃないと言う理解がないと対人関係も上手くゆかないようである。
この習慣も外国を熟知している知識人や大学で学んだ若い人達から、悪習慣であると言う意識が高まりつつあり、改善しようとする努力も伺える。
この習慣を汚いゴミを見るように自虐的に自国を軽蔑する知識人や、仕方がないでしょうと自ら諦める人、何とかしょうと努力しながらも抜け出せない人、恥ずかしいと感じながらも忘れてしまう人等と、彼らの気持ちが様々な形で伝わってくる。
約束の時間の10分前、30分前に着いていなければ気持が悪くなる日本人も、もう少し大らかになった方が精神的なストレスが低下するのでは無いだろうか?
その他、次に示す時間差の他に、夏時間・冬時間があり時計を調整しなければならないが、日本では経験したことがないので時計の針を動かす意味が理解できず、出勤時間を間違えてしまい早朝の公園のベンチで時間を調整した思い出がある。
(日本より15時間遅れの時差)
メキシコ ・・・ 日本
朝 9:00・・ 夜中 0:00
昼 14:00・・ 早朝 5:00
夜中 22:00・・ 昼 13:00
4、大型店舗と青空市の違いをみる。
地域によって状況は大きく異なっているが、この街は日常食材の販売店・外食レストランともに不自由はしない。州都人口も60万を超える都市なので、首都メキシコ・シティほどではないがある程度の日本食材は入手できる。 市内では大型ス-パ-の“ヒガンテ”“カルフ-ル”“メガ”“ウォールマート”等数社が競合するが、来客の殆どが中流クラスの購入客であり、下町に居住する低収入の家庭は青空市場(メルカド)で買い物をすませる。
街中の大型スパーのレジスター 下町の青空市場(メルカド)
野菜は大根、ゴボウ、干ぴょう、長ネギはないがその他はスーパーで入手可能である。ナスはないがズッキニーに似た野菜がある、カラバシーターと称し緑色をしているが食感はナスに非常に似ているので充分代用に耐えうる。キュウリは日本にあるような食感ではなく太くて大味である、種キュウリを食べているような感じであり、酢の物にしてもお世辞にも美味いとは言えない。
時々ピクルス用の小型のキュウリを見かけることがある。若干値がはるが日本のキュウリに似ており、酢の物にしても美味しく食べる事ができる。このキュウリは10本のパック詰めで23ペソ(280円)で売られている。いずれにしろス-パ-にある野菜は新鮮であり見た目にも形が整っている。
(余談であるが、同じ白水社の辞書でありながら、”西-日”辞書ではnaboはカブであり”日―西”辞書では大根とあるので両者に明確な区別が無いのかとも思われる。ちなみに、rabanoはハツカ大根とあり、ご婦人には失礼になるが太い足はpiernas gruesas(ピエルナ・グルエッソ)と言うので大根そのものが無いのではなかろうか?従って、大根おろしはいさぎよく諦めるしか無いだろう。)
大型ス-パ-と青空市場では野菜等の品質が明らかに違う。同じニンジン、ピ-マンについて比較するとス-パ-では形も大きく形状が揃っているが、青空市場では明らかに形が小さく不揃いで新鮮さに欠けおり、市街地の住民と下町との所得格差の厳しい現実を感じる。
日本では決してお目にかかれない珍しい果物を紹介しよう。トゥナ(写真右)と称するサボテンの実である。僅かに甘く水気が多いので如何にも健康に良さそうな実である。実際にウチワサボテンには8種のアミノ酸、各種ビタミン類、カルシューム、鉄等を含んでいる。実には種が多く含まれるが一緒に飲み込んでも差し支えない。赤、黄、緑の3種類がみられる。葉のように見えるのが茎で棘が葉に相当する。